限界利益とは?言葉の意味から知っておきたい情報までをわかりやすく解説。
会社が収益を上げているかどうかを示す指標に「限界利益」があります。限界利益は、損益計算書の項目には表示されていないので、何を示す利益なのか分からない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、限界利益の意味や計算方法、知っておきたい情報までを分かりやすく解説していきます。
目次
限界利益とは
はじめに、限界利益を理解するために、関連する重要な言葉の意味を確認しておきましょう。
固定費
固定費とは、売上高の増減に関係なく常に一定に発生する費用のことを指します。
例えば、人件費、リース費、減価償却費などがあります。固定費は会社が存続する限り必ず発生する経費です。
変動費
変動費とは、売上高の増減に応じて比例的に発生する費用のことを指します。例えば、商品の材料費、輸送費、販売手数料などがあります。
限界利益の計算式
限界利益は、次の計算式によって表されます。
限界利益=売上高-変動費
上の式を見れば分かるように、限界利益は売上高の増減に連動し、売上高が大きくなれば増え、小さくなれば減ります。
数字を当てはめて確認していきましょう。
売上高200 | 変動費40 |
限界利益160 |
売上高120 | 変動費24 |
限界利益96 |
また、限界利益は次の計算式のように表すこともできます。
営業利益=限界利益-固定費
限界利益から固定費を引いたものが営業利益になります。
売上高200 | 変動費40 |
固定費100 | |
営業利益60 |
売上高が増え、限界利益160が固定費100を上回れば、営業利益60が黒字になります。
売上高120 | 変動費24 |
固定費100 | |
営業損失4 |
売上高が減り、限界利益96が固定費100を下回ると営業利益▲4(営業損失4)が赤字になってしまいます。
以上のことから分かるように、限界利益は、売上高の規模がどの程度あれば固定費を吸収できるかどうかの指針になります。その指針を越えれば営業利益が発生します。
限界利益率
限界利益率とは、売上高に対する限界利益の比率のことで、次の計算式によって表されます。
限界利益率=限界利益÷売上高
限界利益率を算出することで、営業利益をどの程度あげられるかを把握することができます。具体例を用いて確認していきましょう。
商品X:売上高300 変動費120 固定費100のとき
限界利益=売上高300-変動費120=180
限界利益率=限界利益180÷売上高300=60%
営業利益=限界利益180-固定費100=80
商品Y:売上高400 変動費240 固定費100のとき
限界利益=売上高400-変動費240=160
限界利益率=限界利益160÷売上高400=40%
営業利益=限界利益160-固定費100=60
商品Xの売上高300に対して商品Yの売上高は400ですが、限界利益率は商品Xが60%に対して商品Yは40%と低くなっています。そのため営業利益は商品Yのほうが少なくなります。
このように営業利益を増加させるためには、売上高の大きさだけでなく限界利益率によっても左右されます。限界利益率を増加させるためには、売上高に対する変動費の割合を引き下げなければなりません。
上記の例の変動費割合(変動費率)を確認してみましょう。
商品Xの変動費率=変動費120÷売上高300=40%
商品Yの変動費率=変動費240÷売上高400=60%
商品Xの方が変動費率が低いため、限界利益率が高くなります。
ここまでのことをまとめると、営業利益を増加させるポイントは以下の2点に集約されます。
- 限界利益を増加させる。
方法・・・売上高を増加させる。固定費を引き下げる。 - 限界利益率を増加させる。
方法・・・変動費率を引き下げる。
損益分岐点
限界利益を理解するうえでは、損益分岐点の考え方を知っておくことも大切になります。
損益分岐点とは、損益がゼロになる売上高のことを指します。ここでは損益分岐点について詳しく解説していきます。
損益分岐点は、次の計算式によって表されます。
上記の計算式のとおり、損益分岐点は限界利益率で固定費を割って求めることができます。つまり損益分岐点は、限界利益で固定費が吸収可能かどうかのポイントになる点なのです。
売上高が損益分岐点を上回れば黒字になり、下回れば赤字になるので、損益分岐点を知ることで会社が最低限確保すべき売上高を把握できます。
また、赤字にならないようにするために、固定費と変動費のいずれかを削減すればよいのかの判断もできます。
限界利益とその他利益との関わり
ここからは、限界利益と損益計算書に表示される売上総利益、営業利益との関わりについて解説します。
売上総利益、営業利益との関わり
売上総利益、営業利益と限界利益は、次の計算式によって表されます。
営業利益=売上高-売上原価-販管費
限界利益=売上高-売上原価-販管費のうち変動費
売上原価とは売上高に連動する費用なのでおもに変動費と考えられます。つまり営業利益と限界利益の差は、販管費のうち固定費を差し引いているかどうかの差です。
下の例のように限界利益が黒字であっても、固定費の額が限界利益を上回れば営業利益は赤字になります。
売上高100-変動費40=限界利益60
売上高100-変動費40-固定費70=営業利益▲10
この場合は固定費を10以上削減すれば、営業利益が黒字に転換することがわかります。
限界利益を活用した意思決定
ここまで解説してきたように、限界利益を掴むことは会社経営において大切な役割を果たします。
ここからは限界利益を活用した、3つの重要な意思決定について解説します。
- 事業存続の意思決定
- 価格の意思決定
- コスト削減の意思決定
事業存続の意思決定
事業を存続すべきか、あるいは撤退すべきかの判断に迫られるとき、最も重視することは事業の収益性でしょう。
限界利益を掴むことで、事業を存続すべきか、あるいは撤退すべきか、存続しても改善する点はどこにあるかなど意思決定の判断材料になります。
価格の意思決定
商品の価格を意思決定することは、売上に大きくかかわってくるため、経営者が最も頭を悩ませることです。
消費者側が求めていることと、会社側の利益を総合的に見極めるために、限界利益を掴むことは非常に重要です。
コスト削減の意思決定
営業利益が赤字であっても、限界利益が黒字であれば固定費を抑えることで営業利益を黒字に転換できます。
限界利益率を算出して価格を決めても、その価格では売れないケースがあるかもしれません。
そのためには、変動費を削減するという意思決定も必要になってきます。
まとめ
会社の経営状態を把握するためには、限界利益に着目することが非常に重要になるということがお分かりいただけたでしょうか。
会社の収益性を改善するためには、目標とする売上の水準やコスト管理の方策を立てることが必要です。
限界利益と損益分岐点をよく理解して業務を行っていけば、会社の見え方も変わってくるのではないでしょうか。
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