変動費と固定費の違い|変動費率を抑えるためには
会社の経営状況を分析する1つの方法として、損益分岐点を求めることが考えられます。どの程度製品を生産したり、商品を販売したりすれば利益が出るのかを把握しておくことは、企業経営において重要な要素です。
損益分岐点を考える際に大事な費用として、変動費と固定費が挙げられます。この記事では、変動費と固定費の違いや変動費率を抑えるためのポイントを解説します。
目次
変動費とは
「変動費」とは可変費とも呼ばれるものであり、生産量や販売量に比例して増減する費用のことを指します。具体的には、原材料費・仕入原価・販売手数料・運送費・外注費などが挙げられます。
売上に関係なくコストが発生する固定費と比べて、変動費では売上高や生産高に影響を受けるのが特徴です。例えば、製品を200個生産するならば、原材料を200個仕入れる必要があると考えられるので、生産量や販売量に応じて金額が変動します。
変動費と固定費の違い
「固定費」とは、売上高や販売量などに左右されず、一定の金額が発生する費用のことを指します。事業そのものを継続するために必要な費用であり、具体的には給与・賞与などの人件費や減価償却費、家賃やリース代などが挙げられます。
固定費に分類される項目は、損益計算書では販売費及び一般管理費に分けられるものが多いのが特徴です。固定費が少なければランニングコストは低いので、それだけ事業を回しやすいと言えるでしょう。
逆に固定費が多い水準にあれば、変動費が増加することによって経営を圧迫する要因になるので注意が必要です。固定費とのバランスを考えた上で、変動費をとらえていく必要があります。
変動費と固定費を分ける理由
経費を固定費と変動費に分けることを「固変分解」といいます。なぜ、わざわざ固変分解が必要なのでしょうか。その理由は、大きく分けて「損益分岐点を把握するため」、「削るべき費用を知るため」、「利益の予測を立てるため」の3つがあります。
損益分岐点を把握するため
損益分岐点は経営における非常に重要な指標のひとつです。損益分岐点とは、売上高-変動費で求められる「限界利益」が固定費と同じ数字にになる点で、黒字と赤字の境目を示します。損益分岐点をはっきりさせるためには、固定費と変動費をしっかり分けて管理することが必要です。
削るべき費用を知るため
固定費と変動費を分けて、それぞれの数値が変化した際、どのように経営状況や利益が変化するかシミュレーションをしてみましょう。すると、利益が少ない場合にどの費用を削るべきなのかを判断しやすくなります。
利益の予測を立てるため
サービスや商品が売れたときの利益を予測するには、経費を変動費と固定費に分けておくことが必須です。
例えば、1回1,000円のサービスを1日に30回提供するとします。すると1日あたりの売り上げは1,000円×30回=3万円です。これを月20日行えば、60万円になります。そして、サービス提供にかかった経費の月額が20万円だったとすれば、月額の利益は60万円−20万円=40万円です。
ただし、このままではサービス提供回数が2割アップした場合、利益がどのように変化するか把握できません。なぜなら、経費の内訳に固定費と変動費が入り混じっているため、サービスの提供回数が2割アップしたとき、経費がいくらになるのかが分からないからです。
そこで、経費を固変分解して、固定費と変動費がそれぞれ10万円だと判明しました。この場合、サービス提供回数が2割アップすれば、変動費も2割アップして12万円になります。したがって、月の売上は72万円、経費は10万円+12万円=22万円ですので、利益は72万円−22万円=50万円になると予測が立てられます。
変動費の計算方法
変動費の求め方を考える上で、まずは売上に関する費用を変動費と固定費に分ける必要があります。2つに分ける方法を「原価分解」もしくは「固変分解」と呼びます。
売上高や生産高と比例する変動費と、比例をしない固定費を分けることによって、将来的に利益がどのように変化するのかを予測することが可能です。原価分解では、基本的に勘定科目ごとに変動費か固定費かを振り分けていきます。
分類方法は業種によっても違いがあるので、詳しくは税理士に相談をしてみましょう。ここでは、製造業や建築業、卸・小売業について変動費と固定費を分けてみます。
製造業の場合
変動費 | 固定費 |
---|---|
直接材料費、買入部品費、外注費、間接材料費、その他直接経費、重油等燃料費、当期製品知仕入原価、当期製品棚卸高―期末製品棚卸高、酒税 |
●製造原価 ●販管費 |
参照:【中小企業庁】中小企業BCP策定運用指針
建築業の場合
変動費 | 固定費 |
---|---|
材料費、労務費、外注費、仮設経費、動力・用水・光熱費(完成工事原価のみ)運搬費、機械等経費、設計費、兼業原価 |
労務管理費、租税公課、地代家賃、保険料、現場従業員給料手当、福利厚生費、事務用品費、通信交通費、交際費、補償費、その他経費、役員給料手当、退職金、修繕維持費、広告宣伝費、支払利息、割引料、減価償却費、通信交通費、動力・用水・光熱費(一般管理費のみ)、従業員教育費、その他管理費 |
参照:【中小企業庁】中小企業BCP策定運用指針
卸・小売業の場合
変動費 | 固定費 |
---|---|
売上原価、支払運賃、支払荷造費、支払保管料、車両燃料費(卸売業の場合のみ50%)、保険料(卸売業の場合のみ50%) |
販売員給料手当、車両燃料費(卸売業の場合50%)、車両修理費(卸売業の場合50%)販売員旅費、交通費、通信費、広告宣伝費、その他販売費、役員給料手当、事務員給料手当、福利厚生費、減価償却費、交際・接待費、土地建物賃借料、保険料(卸売業の場合50%)、修繕費、光熱水道料、支払利息、割引料、租税公課、従業員教育費、その他管理費 |
参照:【中小企業庁】中小企業BCP策定運用指針
上記の点を踏まえた上で、限界費用と利益率について解説します。
限界費用と限界利益
限界費用とは、生産量を増加させたときにどの程度の追加費用がかかるのかを示すものです。例えば、1日あたり100個の製品を生産している工場が101個の生産に増やしたとしても、家賃や水道光熱費などの増加分はわずかです。
一方で、原材料費や労働者に支払う人件費は増加することになります。企業は基本的に利益を最大化するための行動をとっていくので、追加的な費用がいくらかかるのかを把握するために限界費用を考える必要があります。
そして、限界利益とは売上高から変動費を差し引いたものを指します。限界利益率といった場合には、売上高に対する変動費の割合を意味しています。
限界利益は固定費と利益を足し合わせたものであり、「限界利益(固定費+利益)+変動費=売上高」となります。売上高と費用(変動費+固定費)が一致する場合は利益がゼロになり、これを損益分岐点と言います。
事業活動においては、損益分岐点よりも売上を高めていくことで利益が発生するので、重要な経営指標なのです。一般的に、固定費が高くなれば損益分岐点も上がってしまうので、多くの商品を売らなければ利益が出ないと言えます。
限界利益と売上総利益の違い
前述の通り、限界利益は「売上高−変動費」で表されます。対して売上総利益は「売上高−売上原価」です。
売上原価と変動費が一致すれば「限界利益=売上総利益」となりますが、一般的には販管費も変動費が含まれるので、その分の差が生じます。
変動費率とは
変動費率とは、変動費を売上高で割ったものを指します。変動費率を下げるほうが事業としては安定性が増すため、その基となる費用をどのように減らしていくかが課題となります。
次に、変動費率を下げる方法について見ていきましょう。
変動費率を下げる方法
変動費率を削減するには、まず事業活動における費用を変動費と固定費に分けたうえで、固定費を見直していく必要があります。固定費が高ければ、同じ売上高であっても損益分岐点を満たすハードルが高くなるので気を付けておきましょう。
人件費や広告宣伝費、家賃などを網羅的に見直すことによって固定費の負担を軽減していくことが大切です。しかし、固定費全体を見直すことは多くの時間と手間がかかります。
オンラインアシスタント・秘書サービスのBackofficeForceでは、経理をはじめ財務・人事・労務などのバックオフィス業務を支援するサービスを展開しています。オンラインのやりとりだけで業務を任せることができ、必要な作業量に合わせて契約することが可能です。
社内のリソースをコア業務に集中させるには、業務効率を考えた上で改善していく必要があります。変動費を下げて、さらに利益の出る企業体質づくりに取り組むために、BackofficeForceをぜひ活用してみましょう。
固定費率とは
変動費率に対して固定費率とは、固定資産を自己資本で割ったものであり、売上高の中で固定費が占めている比率のことを指します。前述のように、固定費には福利厚生費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、水道光熱費などが該当しました。
固定費の削減方法
固定費を削減する方法として、以下のようなものが挙げられます。
- アウトソーシングを活用する
- 不要なリース契約を解除する
- テナント料の安いオフィスへ移動する
- 契約の電子化により、印紙の添付を不要にする
- 業務の効率化を進めて、時間外労働を減らす
- 電気やガス料金を見直し、安いプランに移行する
複数の方法があるように見えますが、結局削減できるのは人件費やオフィスの家賃、水道光熱費などに限定されます。人件費以外については、他の安いプランや物件を探すことができれば解決できるでしょう。
しかし、人件費の削減には業務の効率化による時間外労働の削減が欠かせません。業務を効率化するには第3者の介入が非常に有効です。アウトソーシングを活用して、固定費の削減に繋げましょう。
変動費の削減方法
変動費を削減する方法として、以下のようなものが挙げられます。
- 仕入れ先や外注先との価格交渉を行う
- 大量仕入れや現金仕入れを行い、仕入れ価格を下げる
- ペーパーレス化を進め、印刷費用や消耗品費を抑える
- 現在より安く仕事を受けてくれるアウトソーシング先に依頼する
上記の中では、ペーパーレス化を優先的に行うことをお勧めします。なぜなら、ペーパーレス化は売上に影響を及ぼしにくいからです。一方、仕入先や外注先との価格交渉や外注先の変更は慎重に進めるべきでしょう。これらは製品やサービスの質に影響する可能性があり、下手に手を打つと売上の低下を招きかねません。
変動費は損益分岐点を求める指針
変動費は固定費と異なり、売上高や生産高によって大きく左右される費用です。経営分析を行うための指標の1つである損益分岐点を考える上で重要な要素であり、どのような勘定科目が当てはまるのかを業種別にしっかりと押さえておきましょう。
しかし、社内のリソースが十分でないときに、細かな経理処理まですべて点検しようとすれば時間や労力が多く必要な面があります。BackofficeForceでは経理などのバックオフィス業務をサポートしており、単なる業務代行ではない満足度を提供しています。
事業にかかる費用について気になったときには、オンラインアシスタント・秘書サービスのBackofficeForceを積極的に活用してみましょう。
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