経理業務のDX化とは?必要性やメリット、進め方などの基本を解説
近年、多くの企業で競合との差別化や生産性向上を目的に「DX化(デジタルトランスフォーメーション)」が注目されています。特に経理業務は、紙やExcel中心のアナログ運用が残りやすく、非効率や属人化が課題になりがちです。
本記事では、経理業務のDX化とは何か、その背景やメリット、具体的な進め方までを分かりやすく解説します。DX推進に悩む企業のヒントとなる内容です。
目次
経理業務のDX化とは?
経理業務のDX化とは、デジタル技術を活用して会計や財務のプロセスを抜本的に見直し、効率化と正確性を高める取り組みです。単に請求書処理や経費精算など一部の業務にツールを導入するだけでなく、データの連携や承認フローの自動化など、業務全体をデジタルで統合管理することが重要です。
これにより、経理部門の生産性向上と経営判断のスピードアップを実現します。
経理業務にDX化が求められる理由
経理業務では、人手不足や属人化、法制度対応など課題が山積しています。従来の紙や手作業中心の運用では限界があり、正確性とスピードを両立するためにはDX化が不可欠です。今、経理体制の見直しが急務となっています。
人材不足や属人化への対策
経理分野では近年、「なり手不足」が深刻化しており、採用や人材育成に多くの企業が課題を抱えています。専門性が高い分、ベテラン社員に業務が集中しやすく、結果として属人化が進み、担当者の退職や休職が業務停滞につながるリスクも少なくありません。
限られた人員で安定した経理運営を行うためには、判断を要しない定型作業をシステム化し、精度を保ちながら作業時間を短縮することが重要です。さらに、業務プロセスを可視化・標準化することで、誰でも同じ品質で処理できる体制を構築し、組織としての持続力を高めることが求められています。
経理で人材不足が生じる理由とは?人手不足による影響や4つの解決策2025年の崖への対策
経済産業省が2018年に発表した『DXレポート』では、「2025年の崖」という深刻なリスクが指摘されました。これは、老朽化した既存システムを使い続けたり、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が遅れたりすることで、2025年以降に最大12兆円規模の経済損失が生じる可能性があるというものです。
経理部門も例外ではなく、古い会計ソフトや紙中心の業務を放置すれば、情報連携の遅れや人材継承の断絶といった問題が顕在化します。
こうした事態を避けるには、データの一元管理やクラウド会計の導入など、業務基盤のDX化を早期に進めることが不可欠です。
電子帳簿保存法・インボイス制度への対応
改正電子帳簿保存法は2022年1月に施行され、インボイス制度は2023年10月からスタートしました。これにより、領収書や請求書を電子データで保管・管理することが求められ、経理部門には業務フローの見直しが避けられません。紙書類中心の運用では、法改正のたびに手作業で対応せざるを得ず、ミスや工数増加の原因になります。
一方、経理業務をDX化していれば、電子データの保存・検索・共有がスムーズに行え、制度変更にも柔軟に対応できます。法改正へのスピーディな適応力は、企業の信頼性とコンプライアンス強化にも直結します。
経理DX化がもたらす3つのメリット
経理DX化を進めることで、企業はさまざまなメリットを得られます。中でも特に重要なのは次の3点です。
- 業務の属人化を防ぐことができる
- コストを削減できる
- 業務が効率化される
これらの効果により、経理部門の生産性と経営全体のスピードが大きく向上します。
業務の属人化を防ぐことができる
経理DX化によって業務プロセスがデジタル上で統一・標準化され、誰が担当しても同じ精度で処理できる体制を構築できます。従来のように担当者の経験や勘に頼った属人的なやり方ではなく、システム上にルールや手順を落とし込むことで、ミスや抜け漏れを防止します。
また、業務データやマニュアルが一元管理されるため、部署異動や新入社員の教育、担当者の退職時にもスムーズに引継ぎが行えます。属人化を解消することで、組織全体で安定した経理運営が可能になります。
経理業務の属人化を解消する方法とは?原因やリスクなど詳しく解説コストを削減できる
経理DX化を進めることで、業務の処理スピードが飛躍的に向上し、人件費の削減につながります。これまで時間を要していた請求書の確認や経費精算、仕訳作業などを自動化することで、担当者はより付加価値の高い業務に集中できます。また、ペーパーレス化が進むことで、印刷費や紙の保管スペースにかかるコストも削減可能です。
クラウドシステムを活用すれば、データの保管や共有も効率化でき、全体的なコスト構造の見直しにつながります。DX化は単なる効率化ではなく、経営資源の最適配分を実現する手段といえます。
業務が効率化される
経理DX化により、請求書処理や仕訳入力などの作業が自動化され、これまで手作業で行っていた多くの工程が大幅に効率化されます。たとえば、OCR機能による自動入力やAIによるエラーチェックを導入すれば、入力ミスや確認作業の手間を大きく削減できます。
これにより担当者は、分析や予算策定といったより生産性の高い業務に時間を割けるようになります。さらに、クラウドツールを活用すれば、データ共有や承認フローもスムーズになり、組織全体の業務スピードが格段に向上します。
経理DX化の進め方
経理DX化を成功させるには、やみくもにツールを導入するのではなく、戦略的かつ段階的に進めることが大切です。まず現状の業務を可視化し、手作業が多い定型業務やボトルネックとなっている課題を洗い出します。
次に、紙書類の削減などペーパーレス化を推進してデータを電子化します。そのうえで、自社の課題に適したシステムを導入し、経営状況をリアルタイムに把握できる仕組みを整えましょう。
主な進め方のステップは以下の通りです。
- 定型業務の洗い出し・課題の特定
- ペーパーレス化の推進
- システム・ツールの導入
- 経営状況をタイムリーに可視化
これらを順序立てて進めることで、経理部門を“処理部門”から“経営を支える部門”へと進化させることができます。
経理DX化を成功させる5つのポイント
自社に合ったシステムやツールを選ぶ
経理DX化を進めるうえで最も重要なのが、自社の業務内容や規模に合ったシステム・ツールを選定することです。
機能が多いからといって導入しても、実際の運用に合わなければ現場の負担が増えるだけになりかねません。自社の課題を明確にし、「どの業務を自動化・効率化したいのか」を整理したうえで、必要な機能を見極めることが成功の鍵です。
BackofficeForceでは、会計ソフトや経費精算システム、クラウドストレージ、ワークフロー管理ツールなどを活用し、経理・財務業務全体の最適化を支援しています。ツール導入だけでなく、運用設計や定着化までを包括的にサポートしている点が強みです。
社内外の関係者との調整を円滑に進める
経理DX化を進めるには、経理部門だけでなく、営業・総務・人事など他部署や取引先との連携が欠かせません。請求書の発行や承認フローなどは複数部門が関わるため、全体の業務プロセスを共有し、共通ルールを整備することが重要です。
また、例外的な業務が発生する場合には、手作業で対応するのか、それともデジタル技術を活用して効率化するのかを慎重に見極める必要があります。費用対効果を踏まえた上で最適な方法を選択し、社内外の理解を得ながらDX化を着実に進めることが成功への鍵となります。
マニュアルを整備する
経理DX化を進める際、システムやツールを導入するだけでは十分とはいえません。操作方法や運用ルールが個人の感覚に任されてしまうと、結局は属人化が残り、効率化の効果が半減してしまいます。
そのため、誰が見ても分かるマニュアルを整備し、作業手順や判断基準を明文化することが重要です。マニュアルがあれば、新任担当者への引継ぎもスムーズに行え、特定の社員に依存しない体制を築けます。デジタル化と標準化をセットで進めることで、経理部門の持続的な生産性向上が実現します。
経理マニュアルの作り方|作成のメリットやポイントなどわかりやすく解説適切なセキュリティ対策を行う
経理DX化が進むほど、扱うデータの範囲や重要度は高まり、サイバー攻撃や内部情報漏洩のリスクも増大します。機密性の高い会計・取引データを守るためには、安全性が確認されたクラウドツールを選定することが前提です。
さらに、不正アクセス防止のための多要素認証やログ管理機能、データ改ざんを防ぐ権限設定などの仕組みも欠かせません。
また、技術的対策に加えて、社員一人ひとりがセキュリティ意識を持つことも重要です。定期的な教育や注意喚起を行い、全社で安心・安全な運用体制を整えることが求められます。
経理代行サービスを利用する
自社だけで経理DX化を進めるには、システム選定から設定、運用ルールの構築、社員教育まで多くの時間と専門知識が必要です。特に中堅企業では、通常業務と並行してこれらを進めることが難しく、途中で止まってしまうケースも少なくありません。
そこで有効なのが、経理代行サービスの活用です。専門家が企業の課題をヒアリングし、最適なツール提案から導入支援、運用サポートまでを一貫して行ってくれます。さらに、最新の法改正や制度変更にも対応できるため、常に適正な経理体制を維持可能です。外部の知見を取り入れることで、DX化をスピーディかつ確実に実現できます。
経理代行とは?サービス内容・料金・メリット・選び方など徹底解説経理業務のDX化をご検討中ならBackofficeForceにお任せください!
経理業務のDX化は、単なるシステム導入ではなく、「業務を根本から見直し、持続可能な経理体制を築くための改革」です。人材不足や属人化、法改正対応など、経理を取り巻く環境は日々変化しています。今こそ、アナログな業務を脱却し、デジタル技術を活用して効率化・可視化を進めることが求められています。
BackofficeForceでは、経理・財務の専門家が、貴社の課題に合わせた最適なDX化プランをご提案します。ツールの選定から導入、運用まで一貫してサポートし、経理体制の安定と生産性向上を実現します。
経理DX化をご検討中の企業様は、ぜひ一度BackofficeForceへご相談ください。
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