インボイス制度で建設業はどう変わる?一人親方への対応方法をチェック
多くの企業や個人事業主に影響を与えるインボイス制度ですが、建設業界への影響も懸念されています。
特に、免税事業者の一人親方と取引を行っている企業は、その対応方法について悩まれているケースも多いのではないでしょうか。
本記事では、インボイス制度が建築業に及ぼす影響や、具体的な対応方法などについて解説します。
一人親方と取引を行う企業にとって参考になる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
インボイス制度は建設業にどのように影響する?
インボイス制度は、制度に基づいた請求書の発行・保存に関する法律です。
導入後は、インボイス制度に登録した課税事業者が「適格請求書(インボイス)」と呼ばれる請求書を使ってやりとりを行うこととなります。
次項から、インボイス制度が建設業に及ぼすと考えられるポイントについて「課税事業者の負担増加」「偽装請負の是正」 の2点から解説します。
課税事業者の負担増加
これまで課税事業者は、請求書に必要な情報が記載されていれば消費税の仕入税額控除を受けることができました。
しかしインボイス制度の導入以降は、請求書を発行する取引先が「適格請求書発行事業者」でないと、仕入税額控除を受けることができなくなります。
適格請求書発行事業者は、課税事業者が申請して登録することによって認められる事業者です。
免税事業者は、課税事業者にならない限り課適格請求書発行事業者として登録できません。
これらの点から、 免税事業者と取引を行えば、課税事業者は仕入税額控除を受けることができなくなります。
免税事業者と取引を続ければ、支払うべき消費税額が増えてしまう可能性があるでしょう。
偽装請負の是正
建設業では、会社側が促して従業員を独立させ、一人親方として業務請負契約を締結する偽装請負の問題が有名です。
一人親方として独立した後も、従業員であった頃と変わらない業務を依頼することが多いため「偽装一人親方」と呼ばれることもあります。
従業員として雇う際に発生する法定福利費や社会保険料などの支出を抑えることを目的に、建設業でよく使われている方法です。
しかしインボイス制度が導入されれば支払うべき消費税が増加するため、偽装請負を行っても、そこまで得ではなくなる可能性が高いでしょう。
インボイス制度の導入によって、建設業の偽装請負の問題が是正されるのではないかという見方もあります。
インボイス(適格請求書)の書き方
インボイス制度の導入前は、2019年10月からスタートした「区分記載請求書等保存方式」に基づいて請求書を発行しています。
区分記載請求書等保存方式は、軽減税率制度の導入にあわせて始まった方式です。
購入した商品に軽減税率の対象となる商品が含まれていれば、その旨を記載することが求められます。
また、10%や8%といった税率ごとに合計した金額の記載も必要です。
2023年10月から導入されるインボイス制度は「適格請求書等保存方式」と呼ばれる方式に変更されます。
これまで請求書に記載してきた事項に加えて、以下の項目を新たに追加することが求められます。
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 税率ごとの消費税額および適用税率
「適格請求書発行事業者の登録番号」とは、課税事業者が申請し、適格請求書を発行できる事業者として登録した際に発行される番号です。
登録後に受け取る「登録通知書」で確認することができます。
「税率ごとの消費税額および適用税率 」は、以下の例のような記載が求められます。
10%対象 | 税抜金額 10,000円 | 消費税等 1,000円 |
---|---|---|
8%対象(軽) | 税抜金額 1,000円 | 消費税等 100円 |
インボイス制度に向けて建設業が準備すること
インボイス制度導入に向けて、課税事業者の建設業が準備すべきことをチェックしましょう。
適格請求書発行事業者への登録
自社で適格請求書を発行するためには、手続きを行い適格請求書発行事業者となることが求められます。
手続きの具体的な流れは、以下の通りです。
- 国税庁のホームページなどから入手した「適格請求書発行事業者の登録申請書」を記入する
- 上記書類をインボイス登録センターに送付する
- 登録が完了した旨の通知を受け取る
なお、e-Taxからでも書類を提出することが可能です。
インボイス制度が導入される2023年10月1日から適格請求書を発行するためには、2023年3月31日までの登録が必要です。
もし締め切りを過ぎてしまった場合には、翌事業年度から適格請求書を発行することとなります。
参照:[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)
一人親方が適格請求書を発行できるか確認する
業務を委託する取引先の中に一人親方が含まれる場合は、インボイス制度への対応方法について確認しておきましょう。
これまで解説してきた通り、一人親方が免税事業者であれば、自社が支払うべき消費税額が増える恐れがあります。
一人親方が課税事業者および適格請求書発行事業者となる予定があるかどうか、あらかじめ確認しておくことが大切です。
なお、免税事業者との取引を継続した場合、すぐに仕入税額控除が全額できなくなるわけではありません。
経過措置として、インボイス制度導入後も以下の期間に応じて仕入税額控除を行うことが可能です。
期間 | 控除可能な割合 |
---|---|
2023年10月〜2026年10月 | 80% |
2026年10月〜2029年10月 | 50% |
2029年10月〜 | 控除不可 |
経過措置の期間や割合に基づいて増加する可能性のある消費税額を確認し、今後の対応について考えましょう。
具体的な選択肢としては、以下が挙げられます。
- 免税事業者との取引を続ける
- 免税事業者から課税事業者のへの変更を依頼する
- 課税事業者である一人親方と新たに契約を結ぶ
免税事業者への発注は交渉の仕方に注意する
インボイス制度が施行されれば、免税事業者の取引先に課税事業者になってほしいと考える企業も多いでしょう。
また、一人親方が免税事業者のままであれば、消費税の支払いが増加した分、値引きをしたいと考える企業も多いのではないでしょうか。
このような点について免税事業者と交渉する際は、その方法について注意しなくてはなりません。
免税事業者にとって一方的に不利な条件を強制すれば、下請法などの法律に抵触する可能性があります。
どのような事項が法律で禁止されているかチェックしたのち、免税事業者との交渉に臨むようにしましょう。
参照:下請法の概要
まとめ
インボイス制度の導入により、一人親方を多く抱えている建築業者は対応方法の検討が迫られています。
支払うべき消費税額の計算や経理業務の見直しなど、検討すべき事項が多いと感じている方も多いのではないでしょうか。
インボイス制度は複雑な制度であるため、税理士などの専門家に相談することも大切です。
弊社「BackofficeForceグループ」では、経理をはじめとするバックオフィス全般に関するサービスを提供しています。
「インボイス制度について相談したい」「経理業務の見直しを行いたい」などの要望がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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